「だから、私は――」 「だったら、あちらに戻らせてあげましょうか?」 ふと幕末で聞いた男の声がした。 声の方に視線を移せば、そこには幕末で会った時と同じ袈裟を着た影時が立っていた。 「何で、あんたがこっちの時代にいるんだ?」 「時の操り人である私には時代を行き来するなど容易いことですよ。それより、貴女は幕末に戻りたいと言いましたね?」 影時は笠をクイッと上げると、左右の色が違う瞳で妃絽を見据える。 何でも見通しているような目に見据えられ、妃絽は素直に頷いた。