「何か用?」 「妃絽に会わせたい人がいるんだよ」 そう言って、齋は二人の男女を呼んだ。 揃いの指輪を左手の薬指にしていることから二人が夫婦であることが分かる。 「その方々は?」 妃絽は怪訝そうな眼差しを二人に向けた。 すると、齋は衝撃的なことを口にした。 「この方々は望月貴志さんと由利子さん。妃絽、君の実のご両親だ」 妃絽の目が驚愕で見開かれた。 目の前にいる人物が十八年前に赤ん坊の自分を捨てた両親…。 今更何の用だという気持ちと共に怒りに似た哀しみが込み上げて来る。