「やっぱり馬鹿だね…、夏樹」 妃絽が馬鹿を見るような眼差しを夏樹に向けると、彼は不思議そうに頭を捻る。 「何か言った、妃絽?」 「いや、別に。でも、いつまでも戻らなかったら、繭や園長達を哀しませるかもね…」 ふと妃絽の表情が曇る。 施設の子供達や繭、園長達とは血は繋がっていなくても、家族同然に暮らして来た。 何の恩返しもせずに行方知らずになるのは申し訳ない気がした。