「園長だったら、本当に殺しかねないね」 「当たり前だよ。父さんは何だかんだで実の息子より妃絽達を可愛がってたから」 夏樹は少しいじけているようだったが、妃絽は知っていた。 彼の父が誰よりも可愛がっていたのは愛する妻の忘れ形見であり、彼女の面影を持つ実の息子、夏樹だ。 夏樹の母は彼をこの世に産み落としてすぐに命を落とした。 己の命をかけて産んでくれた我が子を愛さない訳がない。 その証拠に夏樹を見つめる目が慈愛に満ちている。 親の心子知らずとはまさにこのことだろう。