揺れる水面 映る月影は何処から



しかも、雨が降っているせいで足場も悪い。



一歩間違えば、確実に死ぬ。



「妃絽ッ!止めろ!!」




夏樹は彼女の腕を掴み、引き戻した。



「離せ、夏樹ッ!実の親に捨てられた私にどう生きろと言うんだよ!」



「落ち着け、妃絽!」



「私は何で…、何で…生きてるんだよ…。誰も愛して…、守ってくれないんだよ…」



宥める為に抱きしめた妃絽の身体は小刻みに震えている。



死んだと思っていた両親が生きていて、男ではないからと自分を捨てた…。



それは生きるなと言われていると同然だった。