しかも、雨が降っているせいで足場も悪い。 一歩間違えば、確実に死ぬ。 「妃絽ッ!止めろ!!」 夏樹は彼女の腕を掴み、引き戻した。 「離せ、夏樹ッ!実の親に捨てられた私にどう生きろと言うんだよ!」 「落ち着け、妃絽!」 「私は何で…、何で…生きてるんだよ…。誰も愛して…、守ってくれないんだよ…」 宥める為に抱きしめた妃絽の身体は小刻みに震えている。 死んだと思っていた両親が生きていて、男ではないからと自分を捨てた…。 それは生きるなと言われていると同然だった。