揺れる水面 映る月影は何処から



「落ち着け、トシ。話は後にしよう。今は望月さんを…」



少し焦り気味をしようとした土方を、隣にいた近藤が宥める。



優先すべきことを取り違えるとは彼にしては珍しいことだった。



「あ、ああ。各務、望月を俺の部屋に運べ」



「はい!」



夏樹は草履を脱ぎ捨てると、土方の部屋へ向かう。



いち早く部屋に着いた沖田と斎藤は手分けして、布団を敷いた。



夏樹は妃絽をそこにゆっくりと寝かせた。



「何があった?話せるなら、話せ」



痛みに苛まれ、険しい顔をする妃絽に土方は問うた。



妃絽は度々激痛で呻きながらも先程の料亭でのやり取り、長州の敗残兵は逃げてしまったことを包み隠さず話した。