「落ち着け、トシ。話は後にしよう。今は望月さんを…」
少し焦り気味をしようとした土方を、隣にいた近藤が宥める。
優先すべきことを取り違えるとは彼にしては珍しいことだった。
「あ、ああ。各務、望月を俺の部屋に運べ」
「はい!」
夏樹は草履を脱ぎ捨てると、土方の部屋へ向かう。
いち早く部屋に着いた沖田と斎藤は手分けして、布団を敷いた。
夏樹は妃絽をそこにゆっくりと寝かせた。
「何があった?話せるなら、話せ」
痛みに苛まれ、険しい顔をする妃絽に土方は問うた。
妃絽は度々激痛で呻きながらも先程の料亭でのやり取り、長州の敗残兵は逃げてしまったことを包み隠さず話した。



