「夏樹、屯所まで走るぞ!」
藤堂の声に夏樹は頷くと、屯所まで走った。
夏樹に背負われ、ユラユラと揺れる視界の中で妃絽はリンと長州の敗残兵達を目にした。
敗残兵達は荷物を抱えている。
おそらく、居場所がばれた今、京の都から逃れる為の荷物だろう。
その証拠に忍びであるリンを護衛につけ、闇に紛れるようにして歩いていた。
この様子だと、今夜中には京の都を抜けてしまうに違いない。
妃絽はそんな彼らから視線を外すと、夏樹の背に顔を埋めた。
「また…、やっちゃった…」
近くにいる夏樹の耳に届かないくらい小さな声で呟くと、妃絽は悔しそうに唇を噛み締めた。



