ふと妃絽は離れに繋がる廊下の真ん中で足を止めた。 「もしかしたら、そこに長州の敗残兵が…」 噂が本当で敗残兵が此処に匿われているのなら、今まで行ったことがない離れにいる可能性が高い。 妃絽は目の前の襖を睨みつけていた。 「どうしたの、ひさちゃん?」 すると、そんな妃絽に後ろから声をかける影があった。 「鈴ちゃん」 後ろを振り向くと、そこに立っているのは同じく使用人の鈴だった。 鈴は妃絽に近付くと、左手の方を持ってくれる。