禁門の変からしばらく経った頃。



左腕の怪我が完治した妃絽は潜入捜査をしていた。



捜査の対象は長州の敗残兵を匿っていると噂される料亭。



「ひさちゃん、これ離れに運んで」



「は~い!」



妃絽はひさという偽名で、料亭の使用人として働きながら情報を得ていた。



料亭の女将に頼まれ、妃絽は御膳を二つずつ重ねると、それを両手に抱えて離れへと向かった。



今から行く離れは料亭の一番奥にあり、あまり人は近付かない。



妃絽も働き始めて一週間は経つが、初めて行く場所だ。