秋時と景時には大見栄を切ったが、自分にチカラがないことは本当はわかっている。

魔術なんて、オニにはまるで通じなかった。

チカラが欲しかった。
復讐を遂げるためのチカラが。

だから、ドラゴン伝説が根付く北欧のある地方と同じ感覚を、さらに強く感じるこの小さな池を見つけた時は狂喜した。

すぐに周囲に召喚のための魔法陣を描き、藁にも縋がる思いで供物を捧げた。

あの美しい鬼が言った通り、『闇』が宿主の小動物に取り憑いて、産まれた瞬間に捕獲したオニを。
時には慈龍寺の僧の後を尾け、彼らの目を盗んで横取りした、傷ついたオニを。

思った通り、池は『闇』とは別の凶々しい気配を放ち始めた。

もうすぐだ。

きっともうすぐ、ナニカが姿を現す。

ドラゴンでなくても…
たとえ悪魔だろうと構わない。

己の魂を捧げてでも、チカラを手に入れるのだ。

そして、復讐を果たす。

オニを殲滅する。