「あ、あぁ」



僕は間抜けな返事をして、

彼女の横へ足を運ぶ。



「…………」


「何?」



彼女の横顔を見て息をのむ

僕に対して、彼女は視線を

動かさずに問う。


美人。率直な僕の感想は、

声にはならなかった。


切り揃えられた前髪、

手入れの行き届いた長い黒髪、

雪のように白い肌、

整った顔立ち、スタイル、

完全で、完璧。



「何?と聞いたのよ」



そこで彼女は初めて、

僕に視線を向けて話した。



「あ、悪い」


「なぜ謝るの?」


「いや……、悪い」


「ふーん?分かった」



言って彼女は視線を戻す。


僕には何が分かったのか

分からなかった。



「どうして屋上に?」


「あぁ……、騒がしくて。

ああいう空気、苦手なんだ」


「あなた友達少ないでしょう?」



初対面の相手に対して

そんな失礼なことを言うか?


まあ、確かに友達は

多くはないけれど……



〜♪


黙る僕の横で鼻歌を歌う彼女。

この曲、

入学式シーズンによく耳にする曲だ。

友達100人出来るかな?的な。


嫌味か、コイツ……



「あたしは友達居ないわよ」


「は?」



堂々と言いきった。

迷うことなく言いきった。