私は、魔王監視の間は、他の死神に仕事を任せることとなった。ちょっとした、休暇だと思って全部任せることにした。



魔法使いは、というと。アイツは忙しなく働いているようだ。どうやら、仕事が大変だと言うのは本当だったらしい。


この間は、城の廊下でぶっ倒れてた。見付けた私が介抱してやると、いつものごとく、殺してくれ!と泣き付かれた。もちろん、いつものようにあしらったが。

私に殺してくれ云々というより、その前にアイツは過労で死ぬんじゃないかと思う。



「んっ…」


眠っている魔王が少し身動ぎする。
口を開けば生意気なクソガキとしか思えないが、黙っていればかなり可愛い。

子どもの寝顔は天使だ!とはこのことか、と思う。あ、いや、この子は魔王だった。



「やぁ、こんにちは」



魔王の寝顔を眺めていたら、誰かが部屋の中に入って来た。

誰!?


「初めましてだね、死神ちゃん」


こちらまで来ると爽やかな笑みを浮かべた青年は、私の右手を取り、チュッと軽く手の甲に口づけた。


「なっ…!?」


こういった挨拶に慣れていない私は、驚き、素早く手を引き抜く。


「顔赤くしちゃってかわいいなー」


青年は、私の様子を見て笑う。


「アナタ誰?」


笑われたことにむっとし、口調が少し強くなる。



「噂には、聞いていたけど、本当に女の死神がいたんだねー」


私の問いには答えず、まじまじと私を見つめてくる。


「こんな可愛い子なら、魂持っていかれちゃってもいいかなー」


「ふざけないでくれる?」


コイツ、何なのっ!?と、目の前にいる青年を見上げる。


金髪に青い瞳。イケメンの定番といった容姿をしている。魔法使いとはまた別の類いのイケメンだ。なんていうか、妙な色気がある!アイツにあるのはヘタレ気だが。



「死神だなんていうから、どんな子かと思って、来てみたけど。ねぇ、君…」


「何してるんですか、キング」



パッと後方に目を向けると、魔法使いがいた。


「い、いつの間に…っていうかキング!!!???」


魔法使いの言葉に、目の前の青年を見る。


「はーい!キングでーす」


キングと呼ばれた青年は、手をヒラヒラとさせ、にっこり笑っていた。