その頃十六夜は庭にある桜の大樹に座り月を見ていた 月は朔だった 月を見上げればいつだって朔の笑顔が脳裏に浮かぶ 死に際間近に、朔は何とか言葉を紡げる程度だったが、伝えるべきことを伝えるため弱々しく呼吸しながらも言葉を紡いだ ――姉ちゃん、今までごめん 俺が弱いから足ばっか引っ張って... でも俺姉ちゃんが居たから毎日楽し かった。ありがとう。 それからこれだけは言わせて、 ―――幸せになって