十六夜が朔を失ってからまださほど時間が経ってない



月が綺麗な夜は必ずここに来ていた

朔とよく来ていた場所


枝が重さで垂れた大樹がずらっと並んでいる川の土手道、芝生の地面に座り川に映った月を見ていた。川は幅が広く向こう側にも桜の大樹が同じように並んでいる


小さくハァ、と吐けば白い吐息がまい上がる


虫の鳴き声一つせず、川が流れる水の音だけで静かだ


今日は寝ずに起きて、月が太陽に変わるまでこうしていようと思っていた



だが


「お前さん誰じゃ?」



そんな声と共に静寂は破られた