腕を組んで天堂の肩にこてん、と頭を預けると天堂は笑って頭を撫でた



「家まで少しだからな、大丈夫か?」


「うん…」



激しい雨だが反対に二人の心は穏やかだった



「そういや、十六夜と出逢った時もこんな感じだったな」



出逢った時、"あの頃""……




「あの頃は雪だったわね…」




天堂が想いを打ち明け、緊張している十六夜を家まで送った時は雪が降っていて、贈った襟巻きを嬉しそうに触っていた十六夜



…相合い傘をしているとより鮮明に思い出す




「そうじゃな…」


「…」


「…」


「…」



言葉はいらなかった。今は何も話さず、二人はそれぞれ色んな想いを馳せていた



目を瞑り穏やかな心で十六夜は天堂に呟いた



このひとと出逢えたこと


夫婦になれたこと


桜李を授かったこと……





今、全てに感謝して………"ありがとう"