「雁蔵んとこで薬貰って来たからな。帰って飲むんだぞ」



それを聞いた十六夜はびっくりして夫を見上げた


「知ってたの…?」


「当たり前じゃろ…あれだけ咳してたら」


気づかれていないと思っていた。天堂の前ではなるべく咳をしていなかったし、したとしても小さい咳を少しだけ…



「無理するな」



「…ありがとう」



肩を抱いた手でそのまま頭を撫でた天堂にさらに寄り添った十六夜は微笑んだ



天堂はあれだけ、と言ったが十六夜はほんの少しだけのつもりだった。だがそんな些細なことにも気づいて薬を貰って来てくれる…薬だけではない



寒いときはそっと羽織を掛けてくれる


傍に居るときは煙管を出さない


危ないときは手を繋いでくれて前を歩くか、寄り添うように歩いてくれる




……やっぱりこのひとの隣に居れてよかった




小さな気遣いが積み重なって心が温かくなる