私でも知ってる、悪名高い三年生だ。
噂によると、タバコお酒はもちろん、喧嘩、万引き、恐喝なんか日常で先生達も手を焼いてるらしいけど。
私達には関係ない人達。関わらなきゃいいんだし。



私はそう思ってたんだけど。




彼等は違ってたみたい。




周りの生徒たちと同じように、何事もなく通り過ぎようとした時だった。


三年生達が一斉に立ち上がる。うちの一人が、私達の前に吸ってたタバコを投げ付けた。
私を庇って立ち止まるヒナタ。あっという間に取り囲まれてしまった。何!?




「小池く~ん、この前はど~もぉ♪」


「………」


「君にやられて俺ら悔しくてさぁ、友達呼んじゃったんだ~」




え?ヒナタの喧嘩相手?
人数は五人。勝てる訳無いじゃない!




「成宮、帰れ」

「でもヒナタ…」




「ちょっと待ちなよ~。彼女だけ帰す訳にはいかないじゃん」

「ちょっと顔貸してもらうよ」



ニヤニヤしながら近づいてくる。ヤバイ。

すると、ヒナタの後ろ手がトンと私に触れる。
えっ?と見上げると、聞こえるか聞こえないか位の小さな声で、ヒナタが囁く。


「隙作るから、お前逃げろ」

「なっ…?」




なんでそんな事言うの?
でも私がいたら、きっとヒナタがうまく戦えない。



どこに連れていかれるのか、校門から離れるように誘導される。前を三人、後ろから二人……すると、後ろの二人が信じられない言葉を吐いた。



「ったくよぉ、とことんカッコつけてくれるよな、小池くんよぉ。ばあさんの時といい、お礼参りの時といい……」

「え…じゃあ」




はっとした。おばあちゃん襲ったのってこの人達?もしかしてあの時の怪我も……おばあちゃん助けたせいで?

ヒナタを見上げると、顔色一つ変えず前方を見据えてる。
絶対そうだ。こいつらのせいでおばあちゃんとヒナタが……許せない。