「きっと尚斗は待ちぼうけするんだね」
ふふっと、やわらかな笑い声が受話器の向こうから聞こえる。
「でも遅く来るだからー…ずっと待ってたら来てくれるんだね、その待ち合わせの人は」
その言葉を聞いて、ついプッと吹き出しそうになった。

今年ひいたおみくじ。
結果は、大吉で恋愛の欄に『待ち人遅く来る』と書かれていた。
美和は、待ち人という単語の意味を待ち合わせした人と捉えてしまったようだ。
やっぱり、この子は国語が苦手なのだと実感した。

「あ!でも、尚斗は短気だから帰っちゃいそう!」
「たしかに帰るかも」
「もし私だったら待っててね!」


たしかに君は待っててって言った。
だから僕は待つ。
一時間でも二時間でも。
ずっと待っている。