『熱い―――』



 唇から漏れた吐息が火傷しそうな程熱く、奈央の唇を刺激してくる。



 熱い塊が奈央の口内を割って侵入してくると、全てを絡みとっていく。



「あ……ん」



 その情熱な口づけに奈央は脳髄まで溶かされそうになって、つい甘い声が鼻から抜ける。



 何度も角度を変えては口づけを繰り返されて奈央の身体の奥が疼きだす。


 そして一条の唇を自ら追いかけようした時だった。



「だめだ、今夜はだめだ」



 唐突に夢から覚めたように、一条が身を離す。



「いや、このままだと止まらなくなる……俺は帰ってやらなきゃならないことがあるからな」



 一条もまた名残惜しそうにして奈央の頬をゆっくり撫で下ろす。



「明日、出社したら一番に俺の部屋に来い、いいな」



 奈央は燻った熱にもどかしさを覚えながら、口づけの陶酔の余韻に浸っていた。