「す、すみません……オニオンスープのレシピのこと、私以外の人には教えるのに、私には絶対に教えてくれないのが納得いかなくて―――きゃ」




 奈央が恥もかなぐり捨てて全て打ち明けると、一条が奈央の言葉を断ち切るようにして抱きしめた。


 一条の指が奈央の髪の毛に埋まっていく。



「一条さ……ん?」



「はぁ……わかったよ、白状する。あいつと同じ発想にされちゃ俺も黙ってらんないからな」



「……え?」



 奈央の肩口でくぐもった一条に声が耳をくすぐる。




「俺が初めて料理らしい料理のレシピを自分で制作して作ったのがオニオンスープなんだよ」



 そういえば羽村が一条が十歳の時に作ったものだと言っていたのを思いだした。



「だから、その……子供心に、一番好きになった女に作ってやるってそう思ったんだよ、お前はすごく幸せそうな顔するからな、お前に教えたら……俺の楽しみが減るだろ」



「……え?」



 奈央の頬に一条の今にも燃えそうな耳朶が触れている。



 身を離そうとしても掴まれてビクともしない。




「俺にこんな事言わせて、お前最低だぞ」



「あ……ッ」



 一瞬身が離れたかと思うと、瞳の奥を覗き込む隙もないまま一条は奈央に強引に口づけた。


 煙草のフレーバーが口内に広がり、それが余計に身を焦がす。