「ごちそうさまでした。なんだか愚痴を聞いてもらってしまって……ありがとうございました」



 ラーメン屋をあとにして、奈央は車でマンションの下まで羽村に送ってもらい走り去る車が見えなくなるまでその姿を目で追った。




『羽村さん……なんか変だったな』




 平静を装ってはいたが、神崎紗矢子の名前を出した途端に表情が強ばって、ラーメンの余韻も感じるまもなく店を出た。



 すでに全部平らげてしまい、会計を済ませるタイミングだったのかもしれないが、羽村は車を運転しながらずっと思案にくれている様子だった。



『考え過ぎだ……明日も早いし、今日は早く寝よ』




 奈央は穿った考えを霧散させるように首を軽く振って自室に入った。