「いいんですよ、美味しいでしょ。でもここの店のことは特別な部下だけには内緒にしてたんですけどね」


「え?」



「いつか連れて行ってやろうって思って引き伸ばしてるうちが楽しいんですよ、まぁ私も司もそこは稚拙な発想ですが、すぐに教えてしまってはつまらない」




 奈央は羽村の意図が全く理解できなかった。



 頭にクエスチョンマークを並べる奈央を見て羽村は笑顔でラーメンをすすっていた。




「ああ、それから司のクッキングスクールですけど、あれはクッキングスクールというより……お料理同好会みたいなコミュニティですね、明らかに司目当てというのが顕著に現れてる」



「え? 羽村さんなんで知ってるんですか?」




「司が新しく始める仕事には必ず私たちF.S.Iの調査が事前に入るんです、一応料理界ではVIPですし」




 何か気に食わないと言いたげに羽村は小さくため息をついて、ラストスパートの味噌ラーメンに唐辛子を入れる。