「春日さんお疲れ様!」


「あ、お疲れ様です」



 仕事も難なく終わり、結局今日は一条と仕事以外の会話を交わすことなく時が過ぎてしまった。



『昨日のこと、謝ろうと思ってたのに……』



 奈央はまとめあげていた髪の毛を振りほどくと、鏡の前の自分の姿を見てため息をついた。



 先程一条に帰りがけに呼び止められたが、後ろからホテルの総支配人に呼ばれ、一条は気まずそうに言葉を飲み込んで何も言わずに「じゃあな」とだけ言い残して支配人とロビーへ向かっていた。


 結局何を自分に言いたかったのかわからず胸につかえたまま奈央がエンランスから出た時だった。