最後、捨て台詞のように一条が奈央に言った言葉が今でも胸に突き刺さっている。


 一条はたとえそれが恋人であっても容赦のない性格だ。


 自分にも他人にもストイックな姿に奈央は必死でしがみつくようについてきたつもりだった。



 一条は厳しいけれど、それをも凌駕する優しさがあるのを奈央は知っている。



『子供……か、私はどうしたら一条さんと対等になれるの?』



 手を伸ばしてもいつも一条は常に自分の前を走っている。



 奈央はその背に追いつきたくて繋ぎ止めたくて、差し出される手を掴もうとするのにいつも指の間を摺り抜けてしまうようだった。




『夢を追いかけてる人だから仕方ない……私はそれでも彼についていくって決めたんだから、明日一条さんにちゃんと謝らなきゃ』



 奈央はもうそれ以上悶々と考える事を止め、頭から布団をかぶり直した。