ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal

「なんだかんだ言って仲良しだな~二人は。見てて妬けるよ、早く結婚すればいいのに」




 北川の言葉に奈央のグラスを持つ手が止まる。



 一条は目を細めて紫煙を燻らせている。



「あ、悪い、ちょっと向こうの客相手してくるわ」



 いつまでも無言の二人に気まずさを覚えたのか、北川がそそくさと奥のカウンターへ行ってしまう。



「結婚……ね」




 ぽつりと一条の口からそんな言葉が呟かれて、奈央は微動だにできなかった。




「俺は考えてるよ、お前と……」




 一条奈央になると返事はした。



 けれど、いざとなるとどうしても思い切りが足りない。




「私も……考えてます。でも、今はやっぱりタイミングじゃないかと……」



「……」




「お互い忙しいし、一条さんも私もまだやりたいことたくさんあると思うし……」




 奈央の脳裏にデジャヴがよぎる。


 かつて、結婚まで考えていたその当時の恋人、桐野との記憶。



『なんか……あの時と同じだ』




 桐野と奈央は結局そのまま別れてしまい、今や桐野は一児の父親だ。



「まぁ、ゆっくりこのことは考えていけばいい、俺の気持ちは変わらないから」




 そう言って一条は完全なる愛を見せつけるように、甘口のブルームーンを飲み干した。