『え? あのオニオンスープ誰が作って買って? うーん、誰だったかなぁ……結構人がいたから誰が何を作って持ち寄ったってわかんないんだよね……』





 結局奈央は昨日のオニオンスープのことが気になって紗矢子に電話した。



 どうしてオニオンスープに拘るのか、怪訝な声音で紗矢子はわかったら連絡するとだけ言って電話を切った。



 そのあとの自己嫌悪に奈央は辟易した。




「春日さん、一条シェフはどこ行ったんですか?」



「え? あ、ああ」




 奈央のぼんやりした頭に不意に声を掛けられて思わず肩を跳ねさせる。



 気がつくと先ほどの忙しさが嘘のように静まり返って、ピークが過ぎたのだと気づく。




「一条シェフは冬の新作メニューレシピ制作で部屋にこもってる」




「あーもうそんな時期ですもんねぇ、季節が移り変わる度に一条シェフ、憔悴しきった顔して怖い顔が益々こわ―――」




「俺が? なんだって?」



「ッ!? い、一条シェフ!?」



「じゃななかったらお前の目の前にいるのは誰なんだ? お前、仕込みの海老の皮むき五百匹な」


「……」