紗矢子は表現できない憤りにも似た沸き起こる感情に、初めてこの男の前で慟哭した。


 何度も拳を斎賀の胸板に叩きつけ、漏れる嗚咽を包み込むように斎賀は紗矢子の背中に腕を回した。



「とにかく、お前は今までの罪を償うんだ。何年かかってもずっとお前を待ってる男がいることを忘れるんじゃないぞ」


「……うん、うん」



 自分を待っていてくれる人がいる。


 紗矢子はその言葉を聞いた瞬間、今まで囚われていた奸悪な塊が溶けてなくなるのを感じた。