紗矢子は初めて斎賀に向き直った。


 こちらの反応を窺うのにびくついて眉間に皺が寄っている。


 そんな斎賀の顔をもう鼻で笑うこともできなくなった。



「嘘……でしょ、なんでそんなの聞いてない」



「離婚していた事を隠していたつもりはない、ただ、俺の中で前に進むことができなかっただけなんだ……そんな状態で、紗矢子を完全に俺のものにする勇気がなかった……すまない」



「な、何……それ、何よ……なんなの」