突拍子もない紗矢子の言葉に一条は絶句する。

 紗矢子の思惑に自分は無意識にはまってしまっているのではないかと思うと一条は拳を思わず握り締めた。


 それと同時に表現し難い恐怖が押し寄せた。



「本人確認さえできれば代理人でもコンテストには参加できます。つまり、私は奈央の代わり……」



「何言って―――」



「ここでコンテストが成功すれば、きっとローザンはもっと知名度が上がって先生のためにも奈央のためにもなると思うんです。


 先生は奈央の事……愛してらっしゃるんでしょう? 奈央だったら、きっと代理の人間を立ててもコンテストを成功させて欲しいって思うはずです」



 一条は紗矢子のまるで催眠術のような言葉を耳の奥で聞きながら、奈央に想いを馳せた。