「結局男を選べなかった。だって、今すごく仕事が軌道に乗っててね、彼のことは好きだったけど、タイミングじゃなかったっていうか」



 自分にも覚えのある経験に奈央は思わず共感せざる得なかった。


 紗矢子は竹を割ったようなきびきびした性格で、嫌なことがあっても後腐れなくいつも前向きな姿勢を崩さない、そんな彼女が少し伏し目がちに話しをしているところを見ると、本当は別れたくなかったのだと思う。




「私ね、何か習い事をしようって思うの! 結婚はしなくても、女はいつでも磨いていたい! でしょ? 奈央は何かプライベートでやってることとかあるの?」



「習い事……かぁ、いいねそういうの。私はやりたくても自分の仕事で手一杯で……」




「都心部にいけば色々あるのよね、この前パンフレット見て思ったんだけど、料理教室とかどうかなーって」



「料理教室かぁ……」