「でも、明日の監査は羽村さんの担当じゃないですよね?」


 このコンテストの監査は羽村ではなく、梨菜の同僚が数名担当していた。


 羽村は余計なものを見られたとばかりに顔をしかめた。


「別に……私は室長だぞ、そのくらいの情報知っていて当然だろう? それに、直接関わるわけじゃない……ただ、ちょっと気になる人物がいるだけだ」


「気になる人物?」



 羽村は最後の紫煙をふぅと吐き出し、灰皿に火種を押し付けて鎮火すると、梨菜に向き直った。




「ひとつ聞いていいか? 例えば……自分の親友が、目の前で逮捕されたらどう思う?」



「……は?」