食欲をそそる匂いが部屋をいっぱいに満たして暖かなオレンジ色の照明が、飾られたクリスマスツリーを照らしている。


「……できた」



 奈央はマンションでひとりクリスマスコンテストに出すメニューを一人で作っていた。



 いつの間にか明日に迫ってしまったコンテストに思いを馳せながら、一条の事を考えた。



『けど、お前がそれで納得してるんならもう何も言わない』



 一条の言葉をなんども反芻する。注意力が欠けて、思わず指を切ってしまい、切り傷が痛痒い。