「はぁ……これも、このホテルも使い物にならなさそうね……」


 ふぅ、とため息をついて肩肘をつきながら紗矢子は自分が集めてきた情報資料に目を通していた。



 眠らぬ街の地下にひっそりと佇むクラブ「noir」に、今夜も紗矢子は身を潜めるようにしていた。



「一樹は? いないの?」



 人差し指でマティーニをかき混ぜながら紗矢子はクラブの店員につまらなさそうに言う。