―――あの男は絶対に見送りなんかしない。


 紗矢子は深夜の雑踏の中ひとり、寒さでコートの襟首を掻き抱きながら白い息を見つめていた。



 紗矢子は後ろ髪引かれるような思いで店から出るのが嫌いだった。


 それを知ってか知らずか、斎賀は見送りはしない、紗矢子もそんな斎賀を振り向いたりしなかった。



 その時、鞄の奥で自分の携帯がなっていることに気がついて、それを取り出す。