一条がもう一度奈央の身体を引き寄せて口づける。

 奈央はそのキスの優しさに偽りはないと確信した。


「そんな可愛いこと言われたら、男としてここで寝落ちするわけにはいかないな……」


「……え? も、もう」



 その言葉に刺激され、羞恥で火照った身体の中に残る情欲の焔が弾けた。


 吐息を飲みこむような口づけに奈央は翻弄されて、夜が明けるまでお互いの熱を絡め合った。


「……」



 けれど、奈央は言い表し難い寂寥感をいつまでも拭いきれないでいた。



「……奈央、愛してるよ」



 一条に再び抱かれながら奈央の瞳は何も映し出すことなく、ただ部屋の片隅をぼんやりと見つめていた。