一条はソファに座って、奈央に隣に来いと仕草で語る。

奈央はおずおずと隣に腰を下ろすと、そっと肩を引き寄せられた。


ふわりと鼻孔をくすぐる一条の香水の匂いに心臓がどきりと脈打つ。




「私の唯一の親友っていうか、同級生なんです……私、結構根暗であんまり友達いなかったんですけど、紗矢子だけは私とずっと仲良くしてくれたんです」



「……そう、か」



 奈央は自分の中で沸き起こりつつある疚しい感情を捩じ伏せながら、紗矢子を親友だと語る自分に呆れた。


けれど、学生時代の事を思い出すと紗矢子との楽しかった思い出が次々と思いおこされてつい頬が緩む。




「紗矢子は頭もよくて、スポーツだって万能だったし、でも唯一手先が不器用だったから、家庭科の時間を通して仲良くなったんですよ、結構楽しかったなぁ」



「……」



 その時、一条は羽村の言葉を思い返していた。





『だったら正直に言ったらどうです? あなたの友人は犯罪者かもしれないと―――』