本当のキミ

彼は声も出ないといった様子だった。

私は真顔に戻って、

『これから、寮に行かれるんですよね?
 …男子寮に』

彼の唾をのみこむ音が聞こえた。
そして彼は小さくため息をついた。

「なんで、そんなことまで知ってるんだ」

真剣な目で私を見つめながら言った。

まあ、いいかと思い。本当のことを告げた。

『昨日、つけたんです。』
と、何食わぬ顔で。

そういうと彼は少し目を見開いて、
「…ッな…」

びっくりした後、またつばを飲み込み
「なんでそんなことした。何が目的だ。」

その言葉に私は、わざとらしく考えるふりをして、

『んー、そうですねー…』
といったあと、
ニヤっと笑い、

『あなたが何故こんな手の込んだことしているか、
 教えてくれたらいいですよ?』

と言った。

彼はまた驚いて、
「…知らないのか…まあ、そうか」

私はその言葉に少し驚いた。
知らないのか?驚くのはそこなの?

まあ、どうでもいいんだけど…

少し納得した様子だった。
まだ全然わからない…

しばらく沈黙が続いて
彼が諦めたように視線を私からずらし

「何が知りたい、ついてこい」

といった。