本当のキミ

そんなことに、今さら気づいた。

私が、夏向を抱く腕に力を入れると、
夏向も力を入れ返して…

消え入りそうな声で、
話し出した。

「俺の、せいなんだ。春奈が死んだのは、俺が…代わろうなんていわなきゃ…俺があんなこと書かなきゃ…」

一度言葉を、切った。

私はそれをじっと待ってることしかできないけど、しっかり聞いてあげたい。

「後から聞いたんだ。春奈、ほんとは逃げ切れるところにいたらしいんだ…でも…俺の親友が足を何かに挟まれて、それを助けようとして…逃げ遅れたって…。俺の力だったら、助けれたかもしれなかったのに……母さんだって……もっと幸せだったかも知れない。」

苦しいんだ、悔しいんだ。

私の制服をつかむ腕から、そんな思いがひしひしと伝わってくる。

お母さんにまで、そんな思いがあるなんて…

何て言ったらいいかわからない…
でも、伝えたい、よ…

不謹慎でも、何でもいい…

『私は…夏向が生きていてくれて…よかった…。』

「…へ」

私は、夏向からスッと離れて、
じっと目を見た。


『私は、夏向が生きててくれて幸せなんだよ…?きっとおんなじ思いをしてる人はいっぱいいる。夏向だから、できたことって…たくさんあるんじゃない?』

これが、夏向にどう響くかわかんない…
自分の気持ちの伝えた事なんてないから、うまく伝わってるかわからないけど…

伝わってほしい。