本当のキミ

結局この日

母さんも春奈も帰ってこなかった。


次の朝


目が覚めると俺はソファに寝ていて、軽い布団が掛けられていた。

『…んっ…』

起き上がると、テーブルの横に母さんが座っていた。

なんで俺、ソファで寝てんだっけ…
回らない頭で記憶を探る、

『あ…!』

思い出した。昨日帰ってこなかったんだ。

母さん。

それに…
春奈。


『お母さん!ねぇ、きの…』

何があったの?と聞く前に俺は母さんの胸の中に引きよせられていた。

『…かぁ…さん…?』

「あのね、春奈。よく聞いて…」

低い声の母さんの胸の中で
あ、そっか…俺春奈だった。
何てぼんやり考えていると、次の言葉が耳鳴りのように響いた。

「夏向は、死んだわ。」

……は…?
シンダ?しんだ?死んだ…?

『何…?何言ったの…?』

「夏向が…焼死したの。」

ショウシ?

焼けたの…?何が?

「塾のコンセントが急に燃えたんですって、理科で実験も同じときにやっていて、においが気にならなくてね…発見が遅れて、10人が重症、13人死亡で、その中に夏向が…」

具体的な話を聞いて、心臓が早まるのを感じる。
夏向ならここにいるよ。