本当のキミ

パシッ

止まってくれないので腕をつかんで制した。

『待って…?』

するとあきらめたように力を抜いて
か細く泣きそうな声で

「何ですか?春奈先輩…」

そう言って俺の方にふりかえった顔は、
脅え、後悔、悲しみ、怒り

いろんな感情が入り混じった、そんな風に…見えた。

たぶん、間違ってないだろう。

『いや、あの…』

俺が話し始めようとしたとき

「あっ…!」

水姫ちゃんの表情が急変し、
恐怖が見えた。
普通じゃない。

水姫ちゃんは俺の方ではなく、後ろを見ている。
おそらくそれを目で追っている。

気になってその視線の先を見る。

そこにいたのは、
少し気の強そうな女の子。

おそらく菫たちと同じ年。
ミディアムの茶色がかった髪に、
少し釣り上がった目。
少し戸惑いが見て取れる。

なんで、あの子を見て水姫ちゃんこんな反応…