本当のキミ

…何秒か俺は固まったまま動けなかった。
回らない頭で、ようやく
『………だ、だれだ…』

とだけ言えた。
もう、言葉すら男口調だ…

自分でも驚くほど動揺していた。

そいつは光から離れながら、
「早野です。早野…菫です。
 そういえば思い出してくれますか?」
と言って、
姿があらわになった。

…ぁ
俺は息をのんだ…
この間の…2年生。
ぼうっとするほどきれいな顔
背は低く、先輩を心配してくれる
優しくて、かわいい後輩

…だった彼女が

怖いくらいきれいな顔で微笑んで
「坂下…先輩」

と言ってきた。

なんでだ?
なんでこんなこと聞いてくる?

時間がすごくゆっくり流れていくような錯覚に陥っていた。
頭が回らない状況が理解できない…

何が起こってる?