「気が向いたら、な」
玲奈の言う通り、最近は飲みに行かない。
多少、自宅で嗜む程度には飲んでいるが。
「失礼します」
一臣が、相変わらずの無表情で現れる。
「何かありましたら、お呼びください」
玲奈は頭を下げ、静かに社長室を出ていく。
コーヒーの香りが、辺りを満たしている。
「香坂さんですが―――」
その名前を聞いた瞬間、理人の雰囲気が少しだけ変わる。
「体調を崩されているようです」
「そう、か」
「本日も残業のようで・・・・・・。心配ですね」
「・・・・・・」
一臣の言葉に、理人は答えず黙る。
心配したところで、真緒はそれを理人には言わない。
理人が何かをしようとしても、断るだろう。
だから、自分が心配するべきなのか、わからない。
「社長。自分の気持ちには素直になった方がいいと思いますが」
「それは、助言のつもりか?」
「どう捉えるかは、社長にお任せします」


