疑問を感じつつ、彩子は答える。
「そうですか。心配ですね」
「そう、ですね。･･････体調悪いときくらい、残業断ればいいのに」
優しいと言えば優しいだろうが、押しに弱いとも言える。
「残業、ですか」
「あの、香坂に用事なら呼びましょうか？」
こんな所で自分と話していないで、真緒を呼んだ方がいいのでは？
けれど、彩子の申し出を一臣は首を振って断った。
「いえ。失礼します」
「･･････？」
一体、何がしたくて来たのだろう？
彩子はハッキリしないまま、自販機へと向かった。
秘書課の給湯室で、玲奈は理人に持って行くコーヒーの準備をする。
豆の種類などはこだわらないが、必ずブラックじゃないと飲まない。
「社長に断られちゃった」
そんな話が聞こえてきて、玲奈は後ろを振り返る。
今年入ったばかりの新人秘書がふたり、給湯室の前で話し込んでいる。
若くて可愛らしい雰囲気だが、理人はそれに誘惑されるような男じゃない。
