(・・・・・・今更、引き返せるわけないな)
真緒はひとりで産むと決断し、自分は彼女に結婚を申し込んだ。
引き返すには遅い。
理人は前髪をかき上げて、ふぅと小さなため息を漏らした。
熱々のお鍋を食べながら、彩子はビールを飲み干す。
「真緒はまだ禁酒?」
「うん。えっと、しばらくは禁酒してる」
妊娠中の飲酒や喫煙は良くない。
それに、栄養面にも気をつけないと。
「・・・・・・ゴホッ」
「大丈夫? やっぱり、風邪引いてるんじゃない?」
咳を漏らす真緒を、彩子は心配そうに見つめる。
「大丈夫だと思うけど・・・・・・」
そんなふうに言われると、不安になる。
真緒は熱々の具を口に運び、今日は早めに寝ようと思った。
翌日、真緒はけだるさを感じていた。
彩子の言う通り、風邪の引きはじめかもしれない。
「香坂。これを今日中に頼みたいんだが・・・・・・」


