そんな自分と結婚しても、お互い苦しいだけで、理人は重荷を背負うことになる。
彼は社長で、自分はただの一般社員。
偶然に偶然が重なって、今の関係があるだけだ。
だから、理人には頼らない。
頼っちゃいけない。
「頑張らないと」
小さな声で呟き、真緒はパソコンを睨むように見た。
問題は山積みで、不安や心配ばかりが募る。
それでも、今自分がするべきことを頑張ろう。
少しでも、胸を張れる母親になるために。
―――父親がいなくても、大丈夫なように。
定時ピッタリ、真緒は仕事を一段落させた。
大きく伸びをすると、気持ちいい。
「彩子は?」
「なんとか、ってところ。ご飯食べに行かない?」
「行く。鍋?」
彩子は力強く頷き、デスクを片付ける。
「野菜たっぷりの美味しい鍋があるのよ。出汁はサッパリで―――」
「ふふふ。寒くなると、鍋が恋しくなるわよね」


