隣の彩子は、それをわかっているからなのか、不機嫌だ。
「あぁ、もう! お腹空いた!」
「子供みたいなこと言わないでよ」
「・・・・・・真緒、顔色悪くない?」
ふと、彩子が真剣さを帯びた声で真緒に問いかける。
「そう?」
「寝不足? 急に寒くなってきたし、風邪かもしれないわよ」
心配する彩子に、真緒は大丈夫と笑ってみせる。
「それより、今度彩子に話があるんだけど・・・・・・」
「話? 今じゃダメなの?」
「うん・・・・・・」
まだ、自分の気持ちをきちんと整理できていないから。
ひとりで産むと決めても、心は不安で揺れている。
(出産費用とか、産まれた後のこと・・・・・・。社長の言ってたことは、正しいのよ)
自分が子供じみているようで、無意識の内にため息が漏れてしまう。
それでも、あの時の自分の選択に後悔はない。
自分が好意を持たれていないことはわかってる。


