真緒は目を合わせないまま、答えた。
「反対はしませんでした。けど・・・・・・賛成してくれた、とも言えません」
両親も、本当はいろいろ聞きたかったと思う。
ひとりで産むに至った経緯。
子供の父親。
でも、真緒には上手く説明できる自信がなかった。
「・・・・・・」
「あの、話はそれだけですか? 心配しなくても、社長の迷惑になるようなことはしません」
話がそれだけなら、今すぐにでも立ち去りたい。
そう思っていたのに―――。
「結婚するつもりは、ないか?」
「・・・・・・結婚?」
真緒が聞き返すと、理人は真剣な様子で頷いた。
「だ、誰が、誰と?」
「俺と、君が」
「・・・・・・冗談を言うために、わざわざ私を連れて来たんですか? 帰ります」
席を立ち帰ろうとする真緒の手を、理人が乱暴に掴む。
「冗談でこんなことは言わない」
「っ!」
間近に迫る、理人の顔。


