「じゃ、決まり。私、これ戻して来るから」
彩子はそう言って、デスクに置かれたファイルを2冊、手に取る。
「すみません。香坂 真緒さんはいらっしゃいますか?」
彩子が廊下に出ようとした瞬間、目の前に現れた黒いスーツ。
「! び、ビックリした・・・・・・。香坂ですか? ちょっと待ってください」
彩子は疑問に思いながらも、真緒の元へ踵を返す。
「真緒。あんたにお客さん。社長秘書の・・・・・・工藤? その人が呼んでる」
「え・・・・・・」
彩子が指差す先には、確かに一臣がいた。
乱れの見えない髪と身嗜みは、どこか近寄りがたい雰囲気がある。
「・・・・・・」
「真緒?」
「あ、なんでもない。行ってくる」
あまり会いたくはないが、目が合ってしまったし、逃げるわけにもいかない。
真緒は重い足取りで、一臣の元へ向かった。
「何のご用でしょうか?」
「今夜、社長があなたとお会いしたいと」


