不遜な蜜月


なんとか遅刻せずに済んだ真緒は、自分のデスクで安堵の息を漏らす。

姉から数件、謝罪のメールが届いていたのも気づかなかった。


「今日は珍しく、ギリギリだったじゃない」

「彩子・・・・・・」


隣のデスクに座るのは、同期の金森 彩子。

同い年で隣のデスクということもあって、すぐに仲良くなった。

そんな彼女は、何やら意味ありげな視線を真緒に向けている。


「あんた、男といたでしょ?」

「な、なんで?」


動揺してしまい、真緒は視線を思わず逸らしてしまった。


「わかるに決まってんでしょ。首のとこ、キスマーク」

「えっ!?」


慌てて首を手で隠し、鏡を探す。


「しかも、うなじにもある。どんな男だったわけ?」


鏡で確認すれば、言われた通り、赤い痕。


「どんな男って言われても・・・・・・」