休日、真緒は姉のマンションに向かう電車の中で、カバンを見てはため息をついていた。

中には、母子手帳が入っている。


(姉さん、怒るかな・・・・・・)


味方だと言ってくれた姉だが、ひとりで産むという報告をしたら、どんな顔をするだろう?


先日の一件以来、理人とは顔も合わせていない。

社長室に呼ばれたのは一度だけ。

後は、忘れてしまったように静かだ。


(本当に、一夜の過ち・・・・・・。私と社長じゃ、誰が見ても釣り合わないもの)


特別美人でもない。

家柄が良いわけでも、裕福な家庭に育ったわけでもない。

社長じゃない真緒にだってわかる。

自分といても、彼にはなんのメリットもないのだ、と。


「こんなことなら、慰謝料でも請求すればよかった」


そしたら、出産費用に回せるのに。

真緒はまたため息をついて、電車が減速していることに気づく。


「あ、降りなきゃ」